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「きゃあーっ!!」
「出たあーっ!!」
メイド他、非戦闘員である使用人達は、悲鳴を上げた。
「曲者め!」
「絶対にここを通すな!」
騎士等の戦闘員達は、勇ましく身構えた。
俺は忍び足で、この場から少しずつ離れる。
一応、ゲームの中では勇者という設定なのだが、どう考えても勝ち目がない相手に文字通りの振る舞いをすることなんてできない。
逃げるしかない。
冒険を開始したばかりの者が、敵幹部と大量の魔物相手に勝つなんて無理だ。
俺が十歩も歩かないうちに、
「うわあああぁーっ!!!」
「ぎゃあああぁーっ!!!」
「きゃあああぁーっ!!!」
次々と悲鳴が聞こえてきた。
振り向くと、血しぶきと共に、人間の首や四肢が、いくつも宙を舞っていた。
「ひっ!」
俺は全力で走る。
ほぼ同時に、どたどたと走る音が聞こえてきた。傍らを見ると、俺と同じように逃げ出す奴らが、何人もいた。
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