147人が本棚に入れています
本棚に追加
電子音が車内に響く。
もちろん、私のでは無い。
「ハロー」
『タクマ、てめぇ何処いんだコラァ』
「腹痛くなっちまってさ、何か変なモン食ったかなぁ?」
『ふざけてねぇで、早く戻って来いっ、今日がどんだけ忙しいか、分かってんだろうが』
「タイちゃん、俺の話聞いてた?オレ、ハラ、イタイの、便所から出れねぇくらいの激痛。だから戻っても、便所から出れねぇじゃん、意味ねぇじゃん。って事で後は頼んだっ」
『おいっ、タクマーー』
まだ相手が話してるのに、勝手に切った。
相手の人、めっちゃ怒ってたけど、大丈夫なんだろうか。
「店、大丈夫なの?」
「ダメだろうな」
「じゃ戻ろうよ」
「ヤダ」
”ヤダ”って子供かっ。
「だってよぉ、俺が居なくて、終わるような店じゃダメじゃね?明日、俺が突然死んだら?もしくは入院とか」
「そんな、”もしも”の話ーー」
「俺は常に万一を頭に入れてる、だから従業員に柔な教育はしてねぇし、俺自身も姿勢で見せてるつもり。まー、俺もマダマダ、だけどな」
チャラくて、いけ好かないヤツだけど、確かに仕事をしてる時は、真剣だと思う。
少しだけ、本当にほーんの少しだけだけど、見る目が変わった。かもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!