1.Why

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電子音が車内に響く。 もちろん、私のでは無い。 「ハロー」 『タクマ、てめぇ何処いんだコラァ』 「腹痛くなっちまってさ、何か変なモン食ったかなぁ?」 『ふざけてねぇで、早く戻って来いっ、今日がどんだけ忙しいか、分かってんだろうが』 「タイちゃん、俺の話聞いてた?オレ、ハラ、イタイの、便所から出れねぇくらいの激痛。だから戻っても、便所から出れねぇじゃん、意味ねぇじゃん。って事で後は頼んだっ」 『おいっ、タクマーー』 まだ相手が話してるのに、勝手に切った。 相手の人、めっちゃ怒ってたけど、大丈夫なんだろうか。 「店、大丈夫なの?」 「ダメだろうな」 「じゃ戻ろうよ」 「ヤダ」 ”ヤダ”って子供かっ。 「だってよぉ、俺が居なくて、終わるような店じゃダメじゃね?明日、俺が突然死んだら?もしくは入院とか」 「そんな、”もしも”の話ーー」 「俺は常に万一を頭に入れてる、だから従業員に柔な教育はしてねぇし、俺自身も姿勢で見せてるつもり。まー、俺もマダマダ、だけどな」 チャラくて、いけ好かないヤツだけど、確かに仕事をしてる時は、真剣だと思う。 少しだけ、本当にほーんの少しだけだけど、見る目が変わった。かもしれない。
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