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「俺、さっき閉店したって、言ったよな」
「ん?まだ食材はあるって、聞こえましたよ」
「今、何時だと思ってる。お前は、俺を過労死させてぇのか」
「いやいやぁ、んな柔じゃないっすよ、ルイさんは」
「ーー、っとタクマの女?」
ルイと呼ばれた男の人が、私に気がつき、今までの声色とは違う、優しい声色で私に話掛けてきた。
「違います」
「即答かよっ、そこは”はい”って言っとかないと、飯出て来ねぇかもよ?」
「ウソでも、アンタの女になりたくない」
「いいねぇキミ、新鮮だねっ。何ちゃん?」
「”サナ”」
ウソが言えなかった、ルイって人の目が”見抜く目”をしてたから。
「サナちゃんか、好きな席どうぞ」
そう言ってルイさんは、店内の明かりを半分だけつけた。
そして、私が座った席にキャンドルを持ってきて「この明かりで我慢してな?一応店終わってるから」そして厨房らしき方へ、歩いて行ってしまった。
「お前”サチ”じゃねぇの?」
「どっちでも関係ないじゃん」
「名前くらい、いいだろ」
「サナ!高島 サナ」
これも若干ウソだけど、私が名乗った時、ほんの一瞬だけど男の表情が変わった。
でもすぐに元に戻り、くだらない会話を1人で繰り広げた。
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