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1.Why
この街で人気の一つだと言われるClubに来た。
友人にIDを作ってもらって、歳と名前を偽り入った店。
名前は稲森 幸 年齢21
もちろん全てウソである。
初めて入った箱の中は、音楽が体の芯まで揺らし、視界には光がチカチカとし、色んな人間が思い思いに過ごしていた。
この中では、誰が何者なのかなんて気にしない。
非日常のような箱の中に、居心地の良さを覚えた。
店に入れば、知らない男達が次から次へと、ドリンクを奢ってくれる、もちろん下心付きで。
けれど私は、誰の誘いにもノる気なんて無い。
そこまで非日常に、浸るほどバカでもない。
恋愛にも、一夜の甘い夢にも、興味なんて無い。
恋愛ってなに?人を好きになって、どうなんの?…バカらしい。
この先も、そんな予定は無い。
私の人生の送り方も、幕引きも、もう決まってる。
それは何より、私が1番したい事で、何より望んでいる事。
それさえ出来れば、他に望む事など何もない。
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