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「で?なにしに来た」
コーが、真っ直ぐ私を見る。
迷惑、だったのかもしれない。
ここはBARだけど、どう見たって、BARとして開いてる店じゃない。
「こないだ、お礼を、言ってなかったから」
「礼ねーー迷惑そうな、ツラしてたのにか」
見破られてた。
あの日、男達に追いかけられて、怖かったのは事実。
でも、誰かに助けて欲しいなんて、思ってなかった。
捕まって、ナニかされたら諦めるって、思ってた。
「コウやめろよ。素直に礼を言われときゃいいだろ。それに、勝手に助けに入ったのは、コウだろ」
「言われりゃ、そうだな」
「あん時よ、サっちゃんが、タクマとシグレのって分かってねぇのに、何で助けた?面倒な事が嫌いなお前が、自ら首を突っ込んでまでさ」
「さぁな、気紛れ?」
そう言って、伏し目がちにタバコを吸ってるコー。
どこかで、こんな光景を見た気がする。
いつ、どこで?
思い出せない、でも。
たぶんだけど、私は以前コーと会ってる気がする。
「なんだよ、それ。だったら素直に、サっちゃんからの礼を受け取れよ」
「ま、無事で良かったんじゃねぇの?」
「あっ、うん。ありがと…」
言葉と表情とは裏腹に、コーの声色は凄く優しかった。
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