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「あらあら。効果が出るのが、随分早いのね」
今まで、こんな事なかったのは初めてよ。
ころころと鈴を転がすような笑い声が、店の中に響き渡る。美女の足元には皺くちゃになったスーツの中に眠る、一匹の黒猫がいた。その黒猫を見る度、美女は楽しそうに笑うのだ。
ひとしきり笑って、大事そうに抱き上げた。
そして、ショーケースの裏に回り、ニッコリと微笑む。
「上手に寝てて、偉いわね」
片手では収まりきらない、猫たちが眠っている。特製の猫用ベッドに包まれて、安心そうに眠る姿は、癒しを与える。殆どが無防備に腹を曝け出し、身体を伸ばして寝ている。
かつて人間として店に来た時の疲れた顔は、どの猫も微塵も感じられなかった。美女はその様子を見て、満足そうに微笑んだ。
気が滅入る俗世など、忘れてしまえばいい。
私が、大事にしてあげるから。
美女は、新たに加わった猫を、特製ベッドの上に優しく寝かせたのだった。
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