後日談

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後日談

暴動の後、公主夫妻とその娘の行方について様々な憶測が流れたが、どれも証拠を欠き謎のままだった。確かなのは、公国は主を失ったということ。とはいえ、土地の権利は彼ら一族のもので、誰も手を出せない。 宙ぶらりんの状態、国際社会の疑惑の目に耐えられず、少なからぬ人々が公国から流出した。 *** それから数年後、7人の女が、自分こそあのときの公女と名乗りを上げたが、公女なら知るはずの質問に答えられず、身元が割れていずれも偽者と断定された。 そうして20年の月日が流れたころ、1人の若い女が名乗りを上げた。彼女は言った、私が、あの公国の公女クレアです、と。本人か? それとも、また偽者か? 誰もが好奇に満ちた目を向けた。 新たに現れた“公女”は、質問にことごとく正当した。それでも、本人とは限らない。公女と親しくしていた誰かと言う可能性もある。 「DNA鑑定すればいいじゃないか」 だが、両親は行方不明。どうやって? *** 最後の手段は、公女の祖父、つまり公女の父の父、前公主の墓を暴くこと。やむを得ないということで認められた。 そうなると、別の問題が浮上する。公国の土地は、大部分が強い酸性土壌。城の地下の墓地の土も、強酸性で、十数年で埋葬された遺体は土に還るようになっていた。 墓地の中にあったのは、元・人間の腕だったものらしき、「何か」。体は残っていなかった。唯一残されていたのは、左腕らしきものの一部だけ。黄金で装丁された聖書を左手で抱えた形で葬られたから、本の上にあった腕が残ったようだ。 この腕からDNA鑑定が行われ、結果、名乗り出た女は本物の公女と認められた。 *** 公国の土地を取り戻す手続きが済んで2日後、代言人を通して声明を発表した。 「私は、この国の公主となります。税は、公共事業や国家の運用など国民の皆さんが暮らすのに必要なことに用途を限定し、公主一族を養うためには用いません」 「具体的には、我が国で採れるブドウで造ったワイン、蜂蜜、ジャムや酪農製品などを公国の名において販売します。また、農園でのスローライフや城の滞在などを体験していただくツーリズムを進めます」
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