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後日談 2
この施策は、“当たった”。公国は安定した運営がなされるようになった。
そうして数年が経ったころ、ある人物が公主を訪れて告げた。ずっと昔に、あなたの一族の行く末を見届けるように頼まれた者です、と。
公主は応えた。ええ、存じています。書庫に、ティランが残した文書がありました。
あなたは長生きされるから、きっと見届けてくれると。
私たち一族をずっと見守ってくださっていたのですね。お会いできて光栄です。
その瞳を見返して、思った。その瞳、あの日の少年によく似ている。腕一本で国を取り返すと語った、歌姫の祖父に当たるあの少年に。
***
こちらへ、そう促されて、公主と2人、ベランダに出た。遠くで鳥の声がした。
「長閑ですね」
「そうですね、私はあの鳴き声、好きです。親近感を覚えるのかしら?」
ふふ、と笑いながら彼女が言った。
「親近感」
「ええそうです。彼らの習性をご存じでしょう?」
「ああ」
「私は、父が大好きで常に甘えて、べったりとまとわりついていました。奥さん、つまり、私の育ての母ですけど、彼女に意識が向かないほどにね。だってねえ、妹や弟が生まれたら厄介じゃありません? 私、人殺しはごめんだわ」
そんなことはしないと言いながら、彼女はとても楽しそうだった。
カッコウの鳴き声が、さらに森中に木霊した。
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