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エピローグ?
それは、壮大な計画だった。
土地を奪われた彼らは、決意した。いつか必ず取り戻すと。
少年は長じて2人の息子・ケディとティランを持った。彼は息子たちに告げた。
『ケディ、お前は2代目となる現公主の息子に近づくんだ。同じ学校に通い、親友になれ』
『友人として家に招き、弟を優秀な奴として紹介しろ』
『ティラン、お前は、時期を見て一族のトラブルに巻き込まれたと、あの国に逃げ込むんだ。あなたの友人にして私の兄が、敵対勢力に消された、自分も見つかれば命はないと告げて』
『奴らは、そうした後ろ盾も共通の友人もいない、つまり自分の知り合いに知られていない、自分たちの言いなりにならざるを得ない人材を好んで使う。優秀ならなおさらな。お前も、そうした存在になるんだ』
ここまでが第一幕だ、息子たちの反応を注意深く確認しながら、男は話を続けた。
『お前の“友人”が公主に就いたら少しずつ薬を盛る、時間をかけて、息子に代替わりさせる』
『息子の妻への投薬も忘れるな。不妊と聴覚過敏、この2つの体質を起こさせておけ』
『時間がかかるが。
『父親が死んで息子が代替わりすることになったら、就任の披露目をさせろ。そこに俺の娘、まだ生まていないが、お前たち妹を送り込む。新公主とねんごろにさせるんだ』
『半年後に、子を宿した彼女を再び屋敷に送り込む。ティラン、手引をするんだ。跡取りが欲しい彼らは、その存在に飛びつくだろう』
妹…。そんな呟きを漏らした兄弟に、父親が頷いて見せた。まだ生まれていないが、俺の血を引く娘を、生ませるつもりだ。
『彼女の子が本当に自分の子であると公主に信じさせるのも、ティラン、お前の役目だ』
『彼女が生んだ子が、公国を継ぐだろう』
『あとは、血縁鑑定だが。これは、その娘の祖父に当たる前公主を使う。埋葬は、地下に。あの辺りは極度の酸性土壌だ、数十年後には骨も溶ける。だが、左腕は』
『そう、左腕をすり替えろ。そこだけは金装丁の聖書の上にあったから、比較的残っていた、となるように。これを使え』
託されたのは、彼の左腕。息を呑む息子たちに、にやりと笑いかける。
「昔、ある人に言ったんだ、腕一本でこの土地を取り返すとな。すべてが終わったら、彼は訪ねてくるだろう。そのときに、なんて言うかな。
自分で訊けないのが、残念だ」
FiN
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