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毎日、毎日、毎日。夕暮れの公園で小鳥達は歌いました。毎日、毎日、毎日。森へ帰る前に歌いました。
そして、たくさんの時間が過ぎて行きました。
街のみんなが集う公園にはからくり時計が設置されていました。からくりの仕掛けが壊れてから随分と経っていますが、今日も変わらずに文字盤の上で針を回しています。毎日午後五時になると、小鳥が数羽時計の周りに集まって囀ります。小鳥達のコンサートが終わると、子供達はそれぞれの家へ帰って行くのでした。
今日も楽しく歌えたね、と小鳥達は満足げです。小鳥達は毎日この時間になるとこの場所で歌うことになっていました。理由を知っている者はもう群れの中に誰も居ませんが、毎日午後五時のコンサートは彼らの大事な習慣です。歌い終えると、小鳥達は森に帰って行きました。
街の子供達は小鳥達の歌をいつも楽しみにしていました。小鳥達が歌えば帰る時間だということが分かります。素敵な歌を聞いて、また明日と言って手を振ります。
時計の周りの人形達の間で、小鳥達は明日も歌を歌います。いつかの誰かの、何かの思いを乗せて。
そうそう、これは公園の管理人さんから聞いたことなのですが、今度からくり時計の修復が行われるそうですよ。ずっとずっと昔に作られた難しい仕組みを綺麗に直せるようになったそうなのです。
また、人形達が躍り、歌姫がオルゴールの声で歌う日がやって来ます。きっと、小鳥達も一緒に歌を歌ってくれるでしょう。
からくり時計の修復が終わった日。午後五時の公園で人形達が躍り始めました。いつも通りに歌う予定で集まって来ていた小鳥達の中から、一羽が驚いた様子で飛び出します。小鳥は、人形達の真ん中で歌う歌姫のことをじっと見ていました。再び音を奏でることになったオルゴールが、彼女の歌を響かせます。
『ラララ、ラララ、ラララ』
「ぼくはこの歌を知っている。知っているような、気がするんだ。ずっとずっと昔から聞いていたような。ずっと、ずっと、生まれる前から……」
周りの小鳥達は不思議そうに彼のことを見ていました。
「あぁ、何も分からないのに、知っているんだ。素敵な歌だね、お嬢さん」
少しだけ寂しそうに小鳥は笑いました。そして、歌姫の歌に耳を澄ませます。
やがて、小鳥達はオルゴールの音色に合わせて歌い始めました。遊んでいた子供達が集まって来て、楽しそうに様子を見守ります。素敵なコンサートを見届けたら、家に帰る時間。小鳥達や子供達は、森や家に帰って行きます。
小鳥が一羽だけ、時計の前に残っていました。
「明日も一緒に歌おうね」
歌姫は優しい目で小鳥を見ています。にこりと微笑みかけてから、小鳥は飛び立って行きました。
街のみんなが集う公園にはからくり時計が設置されています。午後五時になると開かれる人形達と小鳥達のコンサートは公園の名物です。
そしていつも、最後に一羽だけが歌姫に声をかけてから帰って行くのです。
「やあ、お嬢さん。今日もいい歌だったね」
どれだけ時間が過ぎても、一定の間隔でそんな小鳥が現れました。
「何も分からないのに、ぼくは貴女の歌が大好きなんだ。生まれる前から、たぶん、ずっと。不思議だね」
貴方が聞かせてくれた歌が私も好きです。貴方が姿を変えて名前を変えて私のことを覚えていなくても、私は歌を歌いましょう。貴方のおかげで、私は歌と時間を忘れなかったのだから。
『一緒に歌いましょう』
私の声は貴方に届かないけれど、歌声だけは届くから。
『ララ……』
「……今日も素敵な歌だった。明日もよろしくね」
答えない私に少し寂しげな笑顔を向けて、貴方は森へ帰って行きました。
明日もまた、人形達と小鳥達のコンサートが開かれます。
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