人生をがんばった山上さん

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 それからさらに数年後の朝、私は夫を駅まで送るために運転していた。 夫は月に一度、東京本社に出張していて、その朝がまさにその日だったのだ。 会社の前の大通りを走っていると通勤する人の中に両手に杖を持ってぎこちなく歩いている人が見えた。 身体の不自由な人なんだなと思ったけれどよそ見も出来ないしそのまま駅に行くために通過した。 駅から戻って会社の正門の前にある信号に止まったとき、さっきの両手に杖を持った人が見えた。 なんと山上さんだったのだ。 変わり果てた姿にショックを受けて、帰宅しても動揺は収まらなかった。
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