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目の前でヘラヘラ笑う望々の姿を、上から下までながめてみる。
俺が登校しなかったひと月の間に衣替えしたらしく、制服は半袖になっていた。白いシャツに紺色のプリーツスカート。冬服よりも面積の増えた肌色が、日差しを照り返してまぶしい。
栗色の前髪から覗くまつ毛は光合成する葉のように上向き、それに縁取られた色素薄めの大きな瞳は、光の加減で色が変わる。
小さな頃からキレイだなと目で追っていた瞳だ。今も同じ色なんだとぼんやり見つめていたら、そこに自分が映っていた。甘い匂いがただよってくるのにも気づいて心がソワソワする。
この数分でウォーミングアップを終えた心臓が、本格的にうるさく鼓動し始めた。
「……ていうか今だにマシュ呼びかよ」
「益和って、呼びにくくない?」
「だからって」
「ねぇ、中に入っていい?」
幼馴染とはいえ、一緒に遊んだのはせいぜい小学四年生くらいまでだろうか。中学時代はすれ違ったら挨拶するかしないかだった。
互いに家から一番近い高校に入学したのは親づてに聞いたけど、俺がほとんど登校しないから会ったことはない。
それでもまあ、単位を取るために学校へ来いとか、幼馴染のよしみで言いにくるなら分かる。
少なくとも、ベロチューだなんだと乗り込まれるのは意味不明だった。
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