消えた金魚の前編

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消えた金魚の前編

テレビの上にあるガラス鉢。 中には美味そうな赤い魚。 でも、ご主人様は大切にしているみたいで 毎日餌をやっている。 あの魚を僕が食べたら叱られる。 最近僕の餌にはろくな物がない。 仕方がないので、外で調達している。 ご主人様は、今日も元気も無く家にいる。 以前はお勤めに出掛けていたのに不思議だ。 今日気がつくと魚が居ない。 どうしたのだろう? 昨日までは、元気で泳いでいたのに! ご主人様が僕を呼んでいる。 素早く行かないと怒られる。 僕はご主人様の元へ歩を進める。 ご主人様の目に涙。 あの様な表情のご主人様を僕は見たことがない。 悲しみの中に潜む残忍な目。 僕は不審感を懐きながら、ご主人様に抱かれた。 いつものご主人様の匂い。 ご主人様に温かく抱かれながら 僕はいつもの様に目を閉じた。 このまま、眠ってしまいたい。 頭を撫でてくれるご主人様。 僕の大好きなご主人様。 僕の首に静かに巻かれロープも知らずに、 僕は静かに寝てしまう。 さらに僕は永遠の眠りに就く。 ご主人様の家族の餌として。
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