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食堂に入るなり、オレリアは挨拶をした。
顔をあげた先には、驚いた表情を浮かべる大人が四人いる。先にアーネストから話を聞いていたから、そこに誰がいるかを瞬時に悟った。
壮年の男性は、ミルコ族の族長だった男で国王の父親。となれば、その隣にいるのが族長の妻である女性。
そして、長い黒髪の男性がハバリー国の国王。隣にいるのが王妃で、彼女はアーネストの妹と聞いている。
「お待たせして申し訳ございません」
「それほどかしこまる必要はない。席につきなさい」
穏やかな笑みを浮かべて国王は口にするが、その視線からは警戒心が漂う。
料理が運ばれてきて、食事が始まった。静かな晩餐。
テーブルの上には、肉料理やらサラダやらが大きな皿に並べてある。それを自分たちが好きに取るようだ。
オレリアが知っている晩餐は、一人一人に料理が運ばれてくるもの。このように、大皿から料理を取り分けるというのは、プレール侯爵夫人の教えになかった。
見様見真似で料理をとりわけるが、なぜかアーネストが顔をしかめる。
「こちらも、食べてみないか?」
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