第二十六話

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 十二年間かけて、お互いの距離を遠ざけようとしていたのに。離縁届をつきつけて、さっさと別れようとしたのに。彼女と違う女性を抱いて、嫌われようとしたのに。  それでも彼女はアーネストとの距離を縮め、別れないと宣言し、好きだと言った。 「それで、プレール侯爵夫人……もう、侯爵夫人ではありませんね。プレール夫人はどうなったのですか?」  あれから十日が経ち、アーネストたちを襲ったトラゴス国の残党は、トラゴス国へと送られた。彼らの処遇はトラゴス国が決める。  プレール夫人は前王派の人間で、なんとかして前王派の者を王位に就けようと、残党たちと企んでいたようだ。前王派の人間はほとんどが処刑され、女性や子どもたちは修道院へと送られたのだが、プレール夫人は残党の手を借りてそこから逃げ出した。  残党たちがまず狙ったのはアーネストである。彼らからしてみれば、アーネストは恨みの対象だろう。彼が一人のところを襲えばなんとかなると思ったのか、残党らはアーネストをつけ回していた。しかし、アーネストもほとんどを支部棟で過ごすようなつまらない人間であったため、なかなか隙が生まれない。
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