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「ああ、確認してもらった。間違いなく本物だ。残念ながら、間違いなくトラゴスから届いたものだ。偽物だったらどれほどよかったか」
「お前が開けないのなら、俺が開けるが?」
その言葉を待ってましたといわんばかりに、ダスティンはテーブルの上に置いた手紙を、アーネストのほうにつつっと滑らせた。
手紙を受け取ったアーネストは、刃をつぶしたナイフを上着の内側から取り出して、封を開ける。
「ボン! って爆発したらどうしようかと思ったのだよ」
ダスティンはアーネストにとって弟のようなものだ。いや、義弟である。
だから彼も、アーネストを兄のように慕ってくるのだが、いかんせん慕い方がちょっとおかしい。
「お前が先に読んだほうがいいだろう」
封を開けた手紙を、今度はアーネストがつつっとテーブルの上を滑らせた。
「面倒くさいな」
その気持ちもわかる。なにしろ送り主がトラゴス大国なのだから。
折りたたまれた手紙をゆっくりと開ける様子にはじれったさを感じたが、それだけダスティンは読みたくないのだろう。
文字を追う深緑の眼には、すでに後悔の色が浮かんでいた。
「やはり……読むんじゃなかった」
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