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本当に先ほどから失礼なやつである。だけど、言い返すだけの気力もない。
「うるさい。疲れているだけだ」
ジョアンは不満そうにアーネストを見た。その視線に耐えきれず、アーネストは横を向く。しかしその先にはカウンターがあって、やはり先ほどの女性が忙しなく料理をトレイに並べていた。
ぼんやりとその様子を眺める。理由はない。だけど、つい目で追ってしまう。
あの女性はオレリアと同じくらいの年だろうか。いや、もう少し年上だろう。
オレリアはどうしているだろうか。
そもそも十二年も会っていない。手紙の一つくらい出せただろうにと責められれば、言い訳はできない。だけど、それでよかったのだ。彼女を危険に晒さないためにも、オレリアがアーネストをきっぱりと捨てるためにも。
そこに情があってはならない。
アーネストは彼女から捨てられる。それだけひどいことをした。アーネストはオレリアを弄んだひどい男なのだ。
手紙とともに離縁届を送ったのも、けじめのつもりだった。
オレリアはアーネストがやったことを知れば、間違いなくアーネストを恨む。だからこれ以上、関係を続けてはならない。
「お待たせしました」
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