第十二話

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第十二話

(どうしましょう……)  オレリアの心臓は高鳴っていた。他の人にも聞こえてしまうのではないかと思えるくらい、ドクドクとうるさい。 (アーネストさまだ……)  目の前の二人組。一人はジョアンという男性で、オレリアよりも五歳くらい年上の男性。というのは、彼は食堂によく食べに来てくれるからだ。  彼もミルコ族というのは知っていたし、軍で仕事をしているのも知っていた。そんな彼が連れてきたのがアーネストであった。 「やった。今日はリリーさんだ」  オレリアが注文を聞こうとしたら、ジョアンがオレリアの偽名を口にした。  リリー。それは、オレリアが食堂で働くときの名前。 「あ、ジョアンさん。こんにちは」  いつもと同じように挨拶をして、注文を待つ。 「こんにちは、リリーさん。僕はおすすめランチ。閣下はどうされます?」 「俺は、なんでもいい」 「うわ、出た。めんどくさい男の典型。なんでもいい。てことで、おすすめランチを二つで」 「はい、おすすめランチ。二つですね。少々お待ちください」  にっこりと微笑んでその場を立ち去るが、上手に笑えただろうかと不安にもなる。
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