第十二話

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 今日の付け合わせは、ミルコ族に伝わる野菜料理。これは、オレリアがシャトランから教えてもらった料理でもある。  ――アーネストはね、昔からこれが好きだったのよ。お肉ばかり食べる子だったんだけど、この料理であれば野菜も食べられるって。  シャトランには感謝しかない。  トレイに料理を並べ終えたオレリアは、それをワゴンの上にのせた。ワゴンを押して、先ほどの席に向かう。 「お待たせしました。おすすめランチ二つになります」  アーネストの前に料理を並べるが、緊張のあまり手がぷるぷると震えた。 「ごゆっくりどうぞ」  もしかしたら、声も震えていたかもしれない。急いで厨房のほうに戻る。 「エミさん、エミさん。どうしましょう、どうしましょう」 「よかったね。最近、閣下がこちらに来てくれなくてね。心配していたところだったんだよ」 「そうなんですか?」 「そうそう。ここ、一か月くらいかね。ぱたっと食堂に来なくなって、何を食べているんだろうという話になったのさ。まぁ、あの人なら霞でも食べて生きていそうだけど」  一か月前。それはオレリアがアーネストから手紙を受け取った時期と一致するのではないだろうか。
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