第十二話

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「でも、お顔を見られただけで嬉しいです」 「本当に健気だねぇ。閣下も、なんでこんないい子と別れようとだなんて、思ったんだろうねぇ」  それはオレリアが聞きたい。  十二年間、放っておかれていたのは事実。だけど、いじめられたわけではないし、鞭で叩かれたわけでもない。手紙は届いたか届かないかわからないけれども、突っ返されたわけでもない。  オレリアと別れたかったら、もっと早く別れを切り出したはず。  それを今になってというのが、わからなかった。  となれば、まだチャンスはある。十二年間、待ち続けた女の根性を舐めないでもらいたい。  だけどそこに、他の女性がいる場合は別である。そうなったときは、潔く引き下がろう。そして、修道院にでもいこう。 「あとは、あれだね。リリーが閣下と二人きりになる機会があって、きちんとお話できればいいんだけどね」  エミの言うとおり。  オレリアは今、食堂で働く娘、リリーとしてここにいる。そのような女性が、いきなりアーネストの執務室に乗り込んだらおかしいだろう。だからって、オレリアとして会いに行けば、アーネストは逃げる。
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