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「まぁ。今日、食堂に来てくれたってことは、これからは定期的に足を運んでくれるだろうよ。焦らずに少しずつ進めるしかないね」
「はい」
焦ってはならない。
オレリアは自分にそう言い聞かせる。
「ごちそうさま」
ジョアンの声が聞こえ、オレリアは慌てて会計へと向かう。
「リリーさん。今日は、夜もいますか?」
支払いをしているのはアーネストである。
「あ、はい。私は、今日は昼と夜を担当していますから。あ……おつりです」
オレリアはアーネストの手のひらの上に、小銭を落とした。瞬間、ちょっとだけ指先が触れた。
「あっ……」
ほんの指先だったのに、そこから伝わるアーネストの熱が懐かしいと感じる。
「す、すみません……」
涙がこぼれそうになって、顔をそらした。
「いや」
アーネストの低くて落ち着いた声が、オレリアの涙を誘う。
「閣下。そんなにリリーさんを睨まないでください。怖がってるじゃないですか。ただでさえ、顔が怖いって言われているのに」
「あ……そんなこと、ありません」
オレリアはアーネストの顔が怖いと思ったことなどない。今だって、ただ懐かしいと思っただけ。
「美味かった……」
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