第十三話

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第十三話

 アーネストは久しぶりに食堂で食事をしたが、懐かしい味がした。  あれはミルコ族の伝統的な野菜料理である。それをガイロの食堂で味わえるとは予想外だった。  それだけ、部族間の壁がなくなってきたのだろう。喜ばしいことだ。 「閣下。やっとまともにご飯を食べるようになりましたね。僕が誘った甲斐があったというものですよ」  相変わらずジョアンは調子がよい。  だけど、ジョアンに誘われてからというもの、アーネストは食堂へ足を向けるようになった。  オレリアのことは気になりつつも、返事がこないのだから進展はない。ダスティンに探りをいれてみたが、完全に無視をされている。先に、ダスティンに根回ししておくべきだったと、後悔した。  しかしダスティンも、オレリアのこと以外は事細かに教えてくれる。首都の様子はもちろんのこと、王子のこととか王女のこととか、ただの子ども自慢になっているともいう。  それでも、オレリアについてだけは、まったく回答がない。彼女からも連絡がない。  結婚したというのに、手紙も贈り物も届かなかったら、誰だって愛想を尽かすにちがいない。だからすぐに離縁に応じると思っていたのだ。
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