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けして咎めるつもりはないのだが、つい口調が厳しくなってしまうのは、いつもの癖である。
「これが終わったら帰ります。次の人が来てくれたので」
「そうか」
アーネストが紙幣を出すと、彼女はおつりを渡してきた。
「ありがとうございます」
「今日も美味しかった。特に、あのスープが」
普段であれば、アーネストはこのようなことを言葉にしない。だけど、あのスープだけは懐かしくてほっこりしていて、胸がいっぱいになるような味だった。
「本当ですか? あのスープはわたしが作ったんです。よかったです」
花がほころぶような笑顔を見せられ、アーネストの胸がぐずりと疼いた。
「リリー。あとはもう大丈夫だから。早く帰れよ」
奥から男性の声が聞こえてきて、彼女は「はーい」と返事をする。
「送っていこう」
「え?」
「……いや」
アーネストも、自分がなぜそのようなことを言ってしまったのかがわからなかった。
「こんな時間だからだ。まだ、この辺りも治安がいいとはけして言えない。何かあってからでは遅い」
「ですが、クワイン将軍にそのような……恐れ多いです……」
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