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「しています」
ガイロの街では居住区が一区、二区、三区と区分けされており、区分けされた地区で納税額が異なる。三区は主に、既婚者、子どもがいる世帯が住んでいる地区であるため、アーネストも彼女が既婚者であると推測したのだ。
「ならば、このように遅くなるときには、配偶者に迎えに来てもらうようにしなさい」
「……せん」
「なんだ?」
「夫は、おりません」
「どういうことだ?」
アーネストは眉間に力を込めた。最近、こうやって顔に力をいれてしわを作ると、痕が残る。そうならないように心がけているつもりだが、彼女の今の話を聞いたら、無意識のうちにそうしていた。
結婚しているというのに夫はいないと言われても、意味がわからない。いや、もしかしたら夫に先立たれたのだろうか。となれば、税金の安い、一区に住むことだって可能だ。
「とりあえず、それは俺が持とう。三区だな?」
アーネストは彼女が手にしていたランタンを奪い取った。
広場から離れると、周囲はぐっと暗くなり、噴水の音も聞こえなくなる。カツカツと二人分の足音が周囲に響く。
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