第十四話

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 なぜかアーネストは、ドキリとした。もしかして彼女を送ったあの日、ジョアンに見られたのだろうか。あの気配はジョアンのものだったのか。  いや、何も悪いことはしていない。あんな夜遅い時間帯に、女性を一人歩かせるほうが危険なのだ。だからそれを見守っただけ。 「リリーさんが、客の一人? に口説かれてました。食堂の裏? 野菜くずか何かを捨てようとしていたのかな。そこに一人の男がやってきて、リリーさんを壁にドンって」  それは口説いているのか、脅しているのか。判断が難しい状況である。 「それを見て、お前はどうしたんだ?」  彼女に好意を抱いているジョアンが、どのような行動を取ったのか気になった。むしろ、そういう現場を目撃した場合、どういった行動をするのが正しいのか、参考にしようという思惑もある。 「いやぁ、ほら。人の恋路を邪魔すると馬に蹴られるじゃないですか。ってことで、こそっと隠れて様子を見ていたんですよ。だって、壁にドンですよ? 恋人同士でもないのに。端から見たら、襲っているように見えるじゃないですか。僕だって軍に所属する身ですからね。リリーさんに何かあったら、助けなければと思って。こそっと」
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