第十四話

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 助けなければならないのに、こそっと見ているというのはどうなのか。ジョアンの考えることはよくわからないが、これが最近の若者たちの考えなのだろうか。 「まあ、そうしたら女将さんが裏口から出てきて、リリーさんを呼んでくれて。それで事なきを得たって感じですかね」  ジョアンが「女将さん」と呼んでいるのは、この食堂で長く働いている女性、エミのことだ。ふくよかな体格で、年はアーネストよりも上だろう。  ただ、そんな真っ昼間から男性に絡まれているようでは、やはり夜道の一人歩きなど褒められたものではない。 「ジョアン。夜間の見回りの強化が必要だな」 「え? どうしたんですか? 急に」 「急にではない。いろいろと落ち着いて、人々も外に出るようになっただろう?」 「そうですね。以前よりは、活気が出てきましたよね。浮かれてる人も多いというか」 「そういった浮かれているときが、いろいろと問題が起こりやすい。昼間は他の人の目があるから自重する者も、人の目がなくなった途端、気が大きくなる」
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