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なるほど、と言いながら、ジョアンは最後のパンを口の中に放り込んだ。考えもかみ砕くかのようにして、もぐもぐとパンを咀嚼する。ごくりと喉元を上下させてから口を開く。
「まあ、夜間の犯罪なんて、昔からあるあるでしたし。そうですね、見回りを強化して事前に防げるのであれば、それに越したことはないですよね。いやぁ、てっきり。リリーさんに惚れたのかと思いましたよ。彼女を守るためにそんなことを言い出したのかなって」
「んなこと、あるか!」
「ですよね。閣下にかぎってそんなことありませんよね。かわいい若奥様がいらっしゃることですし。って、僕はお会いしたことありませんけどね」
リリーの件はきっかけにすぎない。だけど彼女が気になるのは、オレリアに重なる部分があるからだろうか。なんとなく、危なっかしくて目が離せない。それなのに、自分だけは大丈夫だと思っている警戒心のなさ。だからつい、守りたくなる。
顔をあげると、客の対応をしているリリーの姿が目に入った。無邪気に微笑み、何かを話している。あいかわらず黒い髪は三つ編みにしていて地味ではあるものの、食堂で働く姿としては清潔感がある。
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