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「た、たすけてっ!」
口が自由になった隙に彼女が助けを求めたため、アーネストは剣を抜く。
「黙れ」
「んっ」
「彼女を離しなさい」
逆上させないように、だけど威嚇するように。落ち着きを払いつつ低く響く声で、静かに声をかけた。
一対二。さらにリリーが捕まっている。明らかにアーネストのほうが、分が悪い。
「ちっ。ずらかるぞ」
だけど彼らはアーネストには敵わないと思ったのだろう。リリーを押しのけて、走り去っていく。
「きゃっ」
倒れそうになった彼女を思わず抱きとめ、気がついたときには男たちの姿はどこにも見えなかった。
「すまない。取り逃がした」
「いえ……ありがとうございます……」
腕の中の小さな身体は震えていた。
「知っている男か?」
「は、はい。何度か、食堂で見かけたことは……」
「そうか」
ジョアンから聞いた話とつながるものがある。これは詳しく話を聞いておいたほうがいいだろう。だが、今日は無理だ。
「家まで送ろう」
「い、いえ。大丈夫です」
彼女はなんとか一人で立とうとしたが、力が入らないのか一歩を踏み出すことができない。
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