第十四話

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 アーネストの上着の裾を掴んだまま、リリーは首を横に振る。 「ここに、一人で住んでいるので……」  誰か呼んできたほうがいい。だけどその誰かにアーネストは心当たりがないし、さっぱりわからない。 「お願いです……一人にしないでください……アーネストさま……」  そう言ってアーネストを見上げた彼女の姿がオレリアと重なった。ドクンと鼓動が跳ね、手足の先まで熱い血が流れていく。  思わず彼女の身体を抱きしめ、そのまま家の中へと入る。  パタン――  扉の閉まる音が室内に大きく響く。  身体を重ねた場所からは、互いの鼓動を感じる。  彼女はオレリアではない。頭ではわかっているはずなのに、身体が求めている。 「怖かった……怖かったんです。あそこで、アーネストさまが来てくださって……」  アーネストの胸に顔を押しつけるかのようにして、彼女は涙を流す。 「ああ……怖かったな……」  子どもを宥めるようにやさしくその背をなでるものの、アーネストの身体は明らかに反応していた。駄目だとわかっているのに、本能には抗えない。それでもまだ、ギリギリ理性を保つ。 「アーネストさま……」
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