第十五話

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第十五話

 食堂での仕事を終えたオレリアは帰路についた。最近、変な男に絡まれることが多いなとは思っていたが、さほど気にしていなかった。誰かがやってくれば男たちはさっと逃げていくし、何かをされたわけではない。  ただ「付き合って」「恋人になって」「結婚して」と。そういった声をかけられるだけ。  アーネストに会いに来たオレリアにとって、アーネスト以外の男性など眼中にない。だけど、変に断って角が立つのも嫌だし、食堂の売り上げに影響が出るのも嫌だった。 『夫がおりますので』  にっこりと笑って、既婚の証の指輪を見せても男たちは引き下がらない。  たいてい困っていると、エミがひょっこりとどこから顔を出して「皿を洗っておくれ」「下準備をしておくれ」と仕事を頼むそぶりを見せつつ、助けてくれた。  だけど今日は、食堂から自宅までの帰り道に男たちとばったり出会った。  夜も遅いし人通りも少ない。だから逆に、こんな時間に彼らがいるとは思わなかったのだ。 『リリーちゃん』  へらへらと笑いながら、男たちが寄ってくる。  ――いい? オレリア。変な男が寄ってきたら、すぐに逃げるのよ。
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