第一話

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 アーネストが、ゆっくりと扉の叩き鐘を叩き付けると「アーネストか? 入ってこい」と声があった。名乗ったわけでもないのに、叩き方だけでアーネストであると判断したのだ。 「失礼します」 「どうした? とうとうボクちゃんのお守りに、嫌気がさしたか? だが、ダスティン一人では、まだまだ不安なところがある。隙を見せれば、大国は攻めてくるだろうし、内部からやられることも」 「親父!」 「なんだ、ボクちゃんもいたのか」  隠居爺と呼ばれている族長であるが、ダスティンにとっては頭の上がらない人物でもある。 「二人そろってどうした」  座れ、とソファを顎でしゃくって促す。アーネストとダスティンは、族長の向かい側に並んで座った。 「母さんは?」 「外に出てる」  族長時代の生活が抜けきらない二人は、まさしく自由人である。 「親父に相談したいことがある」 「ほぅほぅ。一国の主が、こんな爺に相談とはな」  口調は軽いのに視線が鋭いのは、この先の話を読んでいるからだろう。 「まずは、これを見てくれ……」  ダスティンは、先ほどの手紙を族長に手渡す。  族長は目を細くしてその手紙を睨みつけてから、渋々と広げた。
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