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彼の身体がヒクリと揺れたのが見えた。暗くても、これだけ近くにいればその気配を感じるし、姿形もぼんやりと見える。
「初めてなのか? お前の夫は何をしていた? お前を抱かなかったのか?」
「……はい。結婚とは名ばかりで……」
「ひどい夫だな」
同情するかのような眼差しで見下ろしながら、アーネストは優しくオレリアの頬をなでる。
「お前は……こんなにきれいなのに……」
なぜか苦しげに言葉を吐き出す。
「わたし……旦那さまに見捨てられたのです……だから……」
だから、あんな手紙を送ってきたのだ。
「そうか……だったら、俺も間違いなく妻に捨てられるだろう」
足の間を割って、そこにアーネストが身体を滑り込ませてきた。
「これからお前を抱くからな……」
それでもアーネストの目は、オレリアの目の向こう側を見ているように感じる。オレリアを通して、いったい誰を見ているのだろう。
きっと、アーネストの想い人だ。やはり彼は、ここに来て好きな女性ができたのだ。
「あなたがわたしを通して誰を見ているかわかりませんが。今はその人の代わりでもいい。わたしをその人だと思って抱いてください」
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