第十六話

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第十六話

 アーネストは深く項垂れていた。  目の前には、例の夜間警備強化に関する資料が山積みになっている。素案を出してきたジョアンは、さらに夜間警備における予算案まで提示してきたのだ。 『閣下、こちらが人件費。それから、設備費ですね。あとは、どの地区にどれだけの人を割り当てるか。その比率を全部で三パターン出してみました。どれを採用しても費用対効果は同等ですので、これは会議にかけて、他のうま味が多いものを採用してもらうのがいいかな~なんて思ってます』  途中まではよかったのに、最後が残念だった。そこだけ減点と強くジョアンに言うと、不満そうに唇を尖らせて資料をどさりと置いて出ていった。  そして彼の資料に目を通し始めたのだが、途中でその手が止まった。  原因は間違いなくリリーにある。食堂で給仕として働くミルコ族の娘。  彼女のほうから迫られ、身体の関係をもってしまった。そこにアーネスト自身の意思がなかったと言えば嘘になる。
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