第十六話

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 ジョアンにそう言われても、実はアーネストに心当たりはなかった。オレリアとリリーのことを考えて、心ここにあらずだったのかもしれない。 「それで、なんの用だ? お前がおいていった書類は、今、確認している最中だ」 「そうは見えませんけどね。まぁ、いいです」  コホンと、ジョアンはわざとらしく咳払いをした。その様子を、アーネストは不審者を見るかのような冷たい視線を送る。 「閣下……お客様が来ております。お会いになりますか? 事前の約束は取り付けていないとのことです。つまり、アポなしです」 「……客、だと?」  たいてい先触れを出してから訪れるというのに、突然の訪問者とはいったい誰なのか。 「誰だ? 名前は聞いたのか?」 「えぇ……聞いたのですが、名乗らなくてですね。名前を言ったら、絶対に閣下が会ってくれないからだと、彼女は言ってました」  彼女とジョアンが口にした時点で、客人が女性であるのはわかった。
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