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名前を聞いたら逃げたくなるような女性――心当たりは二人。マルガレットかシャトランだろう。アーネストはあの二人に頭があがらない。十二年間、会っていなくても、本質がかわるわけでもないので、やはり頭はあがらないままである。
彼女たちであれば、先触れなく訪れるのもわかる。だって、知っていたらアーネストは間違いなく逃げていた。
「……わかった。通せ……」
はぁと大きくため息をついたところで、ジョアンが目を細くして睨んできた。
彼女たちがここに来たのは、間違いなくオレリアとのことだろう。別れる気持ちに変わりはないことを、強く言わなければならない。最悪、他に好きな女性ができたとかなんとか言って、その彼女と恋仲であると匂わせればいい。そうなると、間違いなくリリーを巻き込むだろうから、やはりリリーには会って話をしておきたかった。
――コンコンコンコン。
扉を叩く音が、部屋中に響いた気がした。
「失礼します。閣下、お客様です」
対外用の顔を作ったジョアンが、一人の女性を連れてきた。
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