第十六話

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 名前を聞いたら逃げたくなるような女性――心当たりは二人。マルガレットかシャトランだろう。アーネストはあの二人に頭があがらない。十二年間、会っていなくても、本質がかわるわけでもないので、やはり頭はあがらないままである。  彼女たちであれば、先触れなく訪れるのもわかる。だって、知っていたらアーネストは間違いなく逃げていた。 「……わかった。通せ……」  はぁと大きくため息をついたところで、ジョアンが目を細くして睨んできた。  彼女たちがここに来たのは、間違いなくオレリアとのことだろう。別れる気持ちに変わりはないことを、強く言わなければならない。最悪、他に好きな女性ができたとかなんとか言って、その彼女と恋仲であると匂わせればいい。そうなると、間違いなくリリーを巻き込むだろうから、やはりリリーには会って話をしておきたかった。  ――コンコンコンコン。  扉を叩く音が、部屋中に響いた気がした。 「失礼します。閣下、お客様です」  対外用の顔を作ったジョアンが、一人の女性を連れてきた。
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