第十六話

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 さすがダスティンである。アーネストのことをよくわかっている。 「今日、こちらへ来たのは、この件です」  つかつかと彼女がアーネストの執務席に寄ってきて、バンと机の上に書面をたたき付けた。机の上の書類が、ザザーッと崩れ落ちるが、オレリアはそれを気にする様子はない。 「離縁したいって、どういうことですか?」  言葉の節々ににじみ出ているのは怒りだろうか。 「どうもこうも、そこに書いた通り、俺たちは離縁しよう」 「意味がわかりません」  バンともう一度机を手のひらで叩く。崩れた書類の束が、さらにざざっと崩れた。 「お前も二十歳になった。他に好いた男の一人や二人、いるのではないか?」 「アーネストさまは、どうしてそう思われるのです?」  どうしてと問われても、十二年間も放置していたのが理由だ。彼女を巻き込みたくはないがために、何もしなかった。  それに、何よりも、オレリアとアーネストでは二十歳も年の差がある。 「逆に俺が聞きたい。お前はなぜすぐにこれにサインしなかった?」 「そんなの……」  彼女はたたき付けた書面をもう一度手にする。
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