247人が本棚に入れています
本棚に追加
さすがダスティンである。アーネストのことをよくわかっている。
「今日、こちらへ来たのは、この件です」
つかつかと彼女がアーネストの執務席に寄ってきて、バンと机の上に書面をたたき付けた。机の上の書類が、ザザーッと崩れ落ちるが、オレリアはそれを気にする様子はない。
「離縁したいって、どういうことですか?」
言葉の節々ににじみ出ているのは怒りだろうか。
「どうもこうも、そこに書いた通り、俺たちは離縁しよう」
「意味がわかりません」
バンともう一度机を手のひらで叩く。崩れた書類の束が、さらにざざっと崩れた。
「お前も二十歳になった。他に好いた男の一人や二人、いるのではないか?」
「アーネストさまは、どうしてそう思われるのです?」
どうしてと問われても、十二年間も放置していたのが理由だ。彼女を巻き込みたくはないがために、何もしなかった。
それに、何よりも、オレリアとアーネストでは二十歳も年の差がある。
「逆に俺が聞きたい。お前はなぜすぐにこれにサインしなかった?」
「そんなの……」
彼女はたたき付けた書面をもう一度手にする。
最初のコメントを投稿しよう!