第十六話

9/11
前へ
/242ページ
次へ
「アーネストさまのことが好きだからに決まってるじゃないですか。わたし、別れる気なんてありませんからね!」  そう言って彼女は、離縁届をビリビリと真っ二つに引き裂いた。 「……オレリア、落ち着け」 「これが、落ち着けますか? 十二年間もアーネストさまが帰ってくるのを待っていたのに、それがこれですか? 二十歳になって初めて手紙が届いたと思ったら、離縁してくれって」  今度はバンと両手を机の上についた。上半身を乗り出してくる。 「アーネストさまにとっては、わたしは子どもだったかも知れません。ですが、わたしだって成人を迎え、さらに二十歳になったのです。いつまでも子どもではありません」 「ああ。だから、ここは別れるべきだと思った」 「わけがわかりません。どうして、わたしが大人になったら、アーネストさまと別れなければならないのですか!」 「それは……俺がお前にとって相応しい夫ではないからだ」  彼女は苦しそうに顔をしかめた。 「相応しくないって……どういう意味ですか?」 「そもそも、俺とお前では二十歳も年が離れている」 「それが何か問題でも?」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加