第十六話

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 ふぅ、と彼女は小さく息を吐いた。それから小さなバッグから何かを取り出して、それを机の上に置いた。 「アーネストさま、忘れ物です」  彼女が机の上に置いたもの――それはアーネストがリリーの家でなくしたと思っていた勲章。 「なっ……」  アーネストはおもわず席を立つ。 「なぜ、お前がこれを持っている……」 「アーネストさま。お気づきになりませんか?」  いや、まさか。そんなことは……。  ぐわんぐわんと頭の中が音を立て、今までの記憶を呼び起こす。 「ごゆっくりどうぞ」  その声色は、アーネストがいつも食堂でリリーからかけてもらったものだ。  すべてがやっと繋がった。  彼女を初めて見たときの既視感。彼女を抱いたときに感じたオレリアの姿。 「り、リリーか?」 「はい。アーネストさま!」 「うぉおおおおおおお」  アーネストは、腹の底から低い声を響かせ、年甲斐もなく吠えた。
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