第十七話

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 もともとあの食堂で働くのは、一か月が限度だとダスティンが言っていた。長くなればなるほど、リリーがオレリアであると気づかれる可能性がある、と。それはアーネストだけでなく他の者にも。ダスティンが危惧していたのは、他の者に気づかれることだった。だから期限は一か月。  その一か月もあと少しという昨日、仕事の帰りに変な男につきまとわれた。アーネストがいなかったら、どうなっていたかわからない。思い出しただけでも、背筋がゾクリとする。  寝台から降りるとズキリと下腹部が痛んだが、その寝台の下に何かが落ちているのに気づき、それを手にする。  勲章であった。  アーネストが上着を乱暴に脱ぎ捨てたときに、その衝撃で落ちたのだろう。  まずは食堂へと足を向けて、今後についてエミに相談する。もともと一か月の約束であったから、その期間内は食堂での仕事をしっかりこなしたいことを伝えた。それから、昨夜、いつも食堂に来る男に追いかけられた内容を口にしたところ、エミはオレリアを夜の担当から外した。仕事の内容も給仕から外して、料理や盛り付け、洗い物など、裏方の仕事に割り振った。
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