249人が本棚に入れています
本棚に追加
第十八話
オレリアの真っ直ぐな視線にアーネストは射貫かれた。
沈黙が生まれるたびに外から聞こえてくるのは訓練兵の号令で、この場所がガイロの軍事施設であると強く意識させられる。
そんななか、隣にいる無邪気な生き物はアーネストの気持ちを刺激し、今までの決意のすべてを覆してきたのだ。
オレリアに離縁する気がないのなら、これ以上の説得を試みても無駄だろう。
そもそもここまでやってくるような行動力の持ち主なのだ。目を離したら、何をしでかすかもわからない。だったら、側において監視しつつ、守ったほうがいいのではないだろうか。
突き離そうとしても離れない場合、ということを想定していなかった。
十二年間もかけて、嫌われようとしていたのに、その作戦は失敗に終わった。
それによって今後どうしたらいいかを考えているのだが。
やはり、彼女と夫婦関係を続けるしかないだろう。むしろ、アーネストも心のどこかではそれを望んでいた。
守れないから突き放す。だけど、失いたくない。理性と気持ちがぐちゃぐちゃに絡みあっている。
そして、一目その姿を目にしたときから、手放したくないとさえ思っている。
最初のコメントを投稿しよう!