第十八話

1/8
前へ
/242ページ
次へ

第十八話

 オレリアの真っ直ぐな視線にアーネストは射貫かれた。  沈黙が生まれるたびに外から聞こえてくるのは訓練兵の号令で、この場所がガイロの軍事施設であると強く意識させられる。  そんななか、隣にいる無邪気な生き物はアーネストの気持ちを刺激し、今までの決意のすべてを覆してきたのだ。  オレリアに離縁する気がないのなら、これ以上の説得を試みても無駄だろう。  そもそもここまでやってくるような行動力の持ち主なのだ。目を離したら、何をしでかすかもわからない。だったら、側において監視しつつ、守ったほうがいいのではないだろうか。  突き離そうとしても離れない場合、ということを想定していなかった。  十二年間もかけて、嫌われようとしていたのに、その作戦は失敗に終わった。  それによって今後どうしたらいいかを考えているのだが。  やはり、彼女と夫婦関係を続けるしかないだろう。むしろ、アーネストも心のどこかではそれを望んでいた。  守れないから突き放す。だけど、失いたくない。理性と気持ちがぐちゃぐちゃに絡みあっている。  そして、一目その姿を目にしたときから、手放したくないとさえ思っている。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

249人が本棚に入れています
本棚に追加