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だから、会いたくなかったのだ。彼女と会うことで、自分の心境に変化が出るのが怖かった。アーネストの立場上、彼女を危険に晒してしまうことも。
ここまできて突き放すこともできない。突き放せないなら、側において守るだけ。
そう心を決めると、すっと気持ちが軽くなった。
「……わかった」
低く唸るようにして同意した。すると彼女は、ぱっと花を咲かせたような笑顔になる。
「よかったです。十二年前は、わたしもまだ子どもで、アーネストさまの隣に立つには相応しくないと思っていたのですが。今なら、大丈夫ですよね?」
目をきらきらと輝かせて、無垢な赤ん坊のように寄り添ってくる。十二年前よりも幼く感じるのはなぜだろう。
「そうだな。思っていたよりも美しくなって、驚いている」
それはもう、直視できないほどに。だけど、どこか見え隠れする幼さが、アーネストの心を刺激するのだ。
「アーネストさまも、以前よりも格好良くなっていて、ドキドキします」
そのように褒められるのも、アーネストにとしては慣れていない。心がむず痒くなる。
「……オレリア。すまなかった」
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