第十八話

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 それはトラゴス国との件があったためである。近隣諸国のトップを招待して、のんきに式典なんて開いている場合ではなかった。そこの警備に兵をまわして、ガイロの街の守りが薄手になれば、ここぞとばかりにトラゴス国は攻め入ってきたにちがいない。  だからって式典の警備をおろそかにすれば、相手の思うつぼである。  しかし、それをオレリアに伝えるつもりはなかった。 「そうだな。だから十五周年で盛大にやりたいのだろう」 「アーネストさまも出席されるのですか?」 「だからダスティンがこれを寄越したのだろうな」  先ほどから何度目のため息かもわからない。肩を上下させてから、その手紙をぱさっとテーブルの上に置くと、オレリアがアーネストの顔を下から見上げてきた。  ほんわかと甘い香りがして、あまりにもの至近距離にドキリとする。その顔は真剣そのもので、今までの幼さがすべて消えたような表情でもあった。 「アーネストさま。これからは一緒にいてくださいますか?」  先ほども別れるつもりはないと、意思確認をし合ったばかりだ。となれば、一緒にいることになる。 「あ、あぁ……」
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