第十九話

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 同じ国でありながら、それぞれの民族性を生かし、けして圧力をかけないのがダスティンの国政のやり方なのだろう。その分、統一性がない国と言われることも多い。  ガイロの街に赴任したアーネストは、ミルコ族でありながらもガイロの街の生活を受けいれていた。だけど彼が言うには、ミルコ族の典型的な家庭の風景にどこか憧れがあったらしい。幼い頃からラフォン城で族長家族と一緒に過ごしていたことも原因の一つのようだ。  アーネストがそのような暮らしをしていた理由をデンスはそれとなく教えてくれたが、アーネストの両親には、一度も会ったことがない。マルガレットも、ダスティンと結婚してからは両親に会っていないとのこと。特に情勢が不安定なこともあり、マルガレットのほうからも、無理して会いに来る必要はないと手紙を送っていたらしい。  マルガレットの話を聞いていた限りでは、親子関係が悪いわけでもなさそうだ。  母親の記憶すらあやふやで、家族と家族らしい関係を築いたことのないオレリアにとっては、よくわからない話でもあり、羨ましいとすら思っていた。
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