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あのときはアーネストから一方的に離縁届けを突きつけられて、冷静な判断もできなくなっていた。そしてガイロの街へ行ったらというマルガレットとダスティンの言葉を鵜呑みにした。
それでもあのときの勢いがなかったら、今でもラフォン城で涙を流し続けていたかもしれない。と考えれば、マルガレットの勢いに押されてよかったのだ。
「食堂でも料理を作らせてもらって、いつかアーネストさまに食べていただけたらなって思っていたので。あの日。アーネストさまが食堂に来られて、美味しかったと言ってくださったのが、本当にうれしかったのです」
偽りのない気持ちを言葉にすると「そうか」と言いながら、アーネストは手を動かす。だけど、その顔が少しだけ赤くなっているようにも見えた。お酒のせいかもしれないが。
「アーネストさま?」
「なんだ」
「わたし。アーネストさまと結婚できて、幸せです。アーネストさまのこと、大好きです」
ごほっといきなりアーネストが咽せた。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ」
アーネストはグラスに注がれている葡萄酒を、一気にあおった。
「あまり、そういうことを口にするものではない」
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