第二十一話

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 守ると約束しておきながらも、側にいてやることすらできなかった。側におけば逆に危険にさらされるのではとも思っていた。だから、突き放す。  そうするつもりだったのに、最後の最後でそれすらできなかったのは、やはり心のどこかで彼女を手放したくないと願っているから。  約束も守れないような枯れ始めた男に、彼女は眩しかった。  アーネストだってなんだかんだと心の中で言い訳を考えながらも、彼女の側にいたいのだ。  それを認めるのに、ずいぶんと回り道をして時間がかかっただけ。 「わたしが一番助けて欲しかったときに、手を差し伸べてくださったのがアーネストさまです」  彼女の腹部を支えるようにして抱きしめていたアーネストの手に、オレリアの手が重なる。 「だけど、俺は十二年間もお前を放っておいた」 「あのとき、アーネストさまがわたしに寄り添ってくださったから、十二年間、待ち続けることができました。十二年前のあの日、わたしはアーネストさまに救われたのです」  彼女だって望んだ結婚であったわけではないだろうに。 「そうか……そう思ってもらえたのであれば、何よりだな」
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