第二十一話

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 今となっては、穏やかな気持ちでそう思えるから不思議だった。  あのときは、彼女を危険な目に遭わせないように、すくすくと育ってほしいと、そう願っていた。 「お前から送られてくる手紙が、俺にとっては、とても楽しみなものになっていたよ」  抱きしめている彼女の身体が、ふるりと震えた。 「ガイロの情勢だってよくないときも続いた。俺も剣を握り、この国を守るために、何人も人を斬った。仲間を失った。だけど、お前から送られてきた手紙を読み直すたびに、冷えた心を暖めてくれるような、そんな気持ちになったんだ」  仲間を失ったのだって一人や二人ではない。  冷え冷えとした風が心を凍り付かせた。それでも血が通うような気持ちを次第に思い出させてくれたのが、オレリアの手紙なのだ。オレリアの手紙で、アーネストは人としていられた。  内容としては、特別なことが書かれているわけではない。アーネストを思う言葉と、オレリアの近況。たったそれだけなのに、心が救われたのは事実。 「オレリア。俺の側にいてくれてありがとう」 「それって……どういう意味ですか?」
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