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身体を起こしたところで、オレリアは痛みを堪えるような声をあげた。
「オレリア様?」
「だ、大丈夫。なんでもない」
顔をしかめて答えてみたものの、なんでもないような状態ではないとメーラが察したようだ。
「背中が痛むのですか?」
大丈夫と言いたいのと、気づいてほしいという思いが絡まり合って、何も答えられない。
すぐにメーラが寝間着の背中側をめくると、顔をしかめた。
「こんなに、ひどいことを……」
メーラも悔しそうに唇を噛みしめる。
「オレリア様。すぐに気がつかずに申し訳ありません」
ぶんぶんと首を左右に振ると、その勢いによって目尻にたまった涙が溢れそうになった。その涙が痛みからくるものなのか、メーラの優しさからくるものなのか、わからない。
喉の奥がツンと痛くなる。
「お薬を塗りましょうね」
メーラは一度部屋を出て、どこからか軟膏の入った瓶を持ってきた。それを背の傷のある場所に、たっぷりと塗られる。
オレリアの背にできた傷は、鞭によって打たれたもの。そしてオレリアを鞭で叩くのは、教育係のプレール侯爵夫人。
「オレリア様、お労しや……」
悲しみが滲みでる声色で、メーラは呟く。
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