第二十一話

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 彼女は別の言葉を待っている。アーネストもそれをわかっていて、わざとそう言った。少しだけ、恥ずかしいという気持ちもあったから。  彼女の淡雪のような白い顎をとらえ、こちらを向かせる。吸い込まれるほどの碧眼に魅入られながらも「愛している」と呟く。  庇護欲がいつ愛情へと変化したのかはわからない。それに気づかぬふりをしていたのも間違いない。年の差、立場、罪、すべてを言い訳にして、彼女に相応しくないと勝手に評価をつけていた。  そんなアーネストを受け入れてくれたのがオレリアだ。ひたむきに十二年間も待ってくれた。  静かに唇を合わせる。  花のような甘い香りが、アーネストを魅了する。わけのわからない酩酊感に襲われ、自我すら手放しそうになる。  ――コンコンコンコン、コンコンコンコン……  しつこく扉を叩く音で我に返ったアーネストは、名残惜しいながらも彼女の唇を解き放つ。 「そっちに座っていろ」  長椅子に彼女を座らせてから扉を開けた。 「閣下。おやつの時間です」 「呼んでない」 「え? そろそろ仲直りしたかなって、ね? 奥様」
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