第二十一話

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「ジョアンが、よくここの菓子店の菓子を準備してくれるんだ。だがな、あいつ。俺の分よりも自分のほうを多く用意するんだ。そしてそれを福利厚生費として費用処理する。抜け目がないというか、なんというか」  クッキーを一つつまむと、それをオレリアの口の前に差し出す。 「ほれ、食べてみろ」  長いまつげを揺らしながら、彼女は黙って口を開ける。 「美味いだろ?」  彼女がパクりと咥えたのを見届けてから指を離し、その手についたクッキーの粉をペロリとなめる。  すると彼女もおもむろにクッキーを手にして、アーネストの口の前へと運んだ。 「はい、アーネストさまも」  同じようにアーネストも、大きな口を開けてクッキーを食べるが、つい、オレリアの指まで食べてしまう。 「あ」  クッキーを食べるように見せかけて、細い指を舐める。 「アーネストさま、それはクッキーではありません」  ちゅ、ちゅ、と音を立てながら指を舐めれば、オレリアの頬が次第に膨らんでいく。これは怒っている。そんな彼女もかわいらしいのだが、喧嘩はしたくないため指を解放した。 「もぅ」
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