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唇まで尖らせているので、軽く口づけると、今度は彼女の目が点になる。
「どうかしたのか? そんな顔をして」
パチパチと長いまつげを瞬いた。
「ど、どうもしません」
彼女は慌てた様子でお茶を飲む。一口飲んだところで「あ」と小さく声をあげる。
「このお茶……ハバリー国に来たときに、初めて飲んだお茶です。あのときは、メーラが淹れてくれたのですが」
「それは、俺が好きな茶葉だな」
「そう、だったのですね」
オレリアは、お茶の香りを堪能しなつつ、嬉しそうに笑った。先ほどから、怒ってみたり驚いてみたり喜んでみたりと、彼女は忙しい。だから余計に、目が離せない。
「……オレリア」
名前を呼んだだけなのに、頬を上気させる。
「二人で、どこかに出かけてみるか?」
「え?」
「と言っても、遠くまではいけないから、ガイロの街を案内するくらいになると思うが」
「いえ! 嬉しいです。アーネストさまとのデートですね。初デートです」
オレリアがぎゅっと抱きついてきた。十二年前は感情を押し殺すのが得意であった彼女は、今では表情をころころと変える素直な女性へと成長したようだ。
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