第二十一話

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 唇まで尖らせているので、軽く口づけると、今度は彼女の目が点になる。 「どうかしたのか? そんな顔をして」  パチパチと長いまつげを瞬いた。 「ど、どうもしません」  彼女は慌てた様子でお茶を飲む。一口飲んだところで「あ」と小さく声をあげる。 「このお茶……ハバリー国に来たときに、初めて飲んだお茶です。あのときは、メーラが淹れてくれたのですが」 「それは、俺が好きな茶葉だな」 「そう、だったのですね」  オレリアは、お茶の香りを堪能しなつつ、嬉しそうに笑った。先ほどから、怒ってみたり驚いてみたり喜んでみたりと、彼女は忙しい。だから余計に、目が離せない。 「……オレリア」  名前を呼んだだけなのに、頬を上気させる。 「二人で、どこかに出かけてみるか?」 「え?」 「と言っても、遠くまではいけないから、ガイロの街を案内するくらいになると思うが」 「いえ! 嬉しいです。アーネストさまとのデートですね。初デートです」  オレリアがぎゅっと抱きついてきた。十二年前は感情を押し殺すのが得意であった彼女は、今では表情をころころと変える素直な女性へと成長したようだ。
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