第二十二話

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第二十二話

 アーネストと初デートの約束を取り付けたオレリアは、その日が来るのを指折り数えていた。  結婚前も、結婚した後も、アーネストと二人きりで出かけたことはない。  その日は、いつもより早く目が覚めた。アーネストと二人で暮らすようになって十日が経ったけれども、残念ながら今でも二人は別の部屋で寝ている。  エプロンドレスに着替えてキッチンへと向かうと、いつもより少しだけひんやりとした空気が出迎えてくれた。昨夜のうちに丸めていたパン生地を、オーブンの中へと入れる。普段と同じ作業をしているのに、時間が違うというだけで心が躍る気持ちになるのが不思議だった。 「……早いな」  キッチンの入り口の扉を開け、壁に寄りかかるような仕草でアーネストがこちらを見ていた。 「おはようございます、アーネストさま」 「おはよう。今日は、いつもより早いのではないか?」 「だって。今日はアーネストさまと初めてのデートの日ですもの」 「そうか。俺は少し、身体を動かしてくる」
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